2018年4月5日木曜日

相撲の行司が、救命作業中の女性に「土俵を降りてください」と呼びかけた問題に見るヒステリー


近頃具合が悪く、昼も夜もない。ただずっと横になったり起きたりを繰り返している。夜中目を覚ましたときに、ツイッターでこの問題を見かけた。

土俵上で挨拶中だった市長が突然倒れたらしい。側にいた男達がかがんで心配そうに見守ってはいるが、何か手を施せている様子はない。そこに観客の一人だっただろう女性が駆け寄り、自分がやるから、という形で押しのけて、心臓マッサージを始めた。

その最中、場内に「女性は土俵を降りてください」というアナウンスが繰り返され、「男性が土俵に上がってください」と呼びかけられた。

確かにとんでもないことだなと思ったが、それに対する理事長のコメントに対する反応は、いくら何でもヒステリーだろうと感じた。

このコメントのどこが問題なのだろうか?


相撲の理事長のコメントは以下の通り。

 本日、京都府舞鶴市で行われた巡業中、多々見良三・舞鶴市長が倒れられました。市長のご無事を心よりお祈り申し上げます。とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。
 応急処置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が「女性は土俵から降りてください」と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます。
(日刊スポーツhttps://www.nikkansports.com/m/battle/sumo/news/amp/201804050000003.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp&__twitter_impression=true

いくつかの新聞の速報にあったような、自己正当化を意図した箇所は存在しない。速報では「女性が救命作業中にはアナウンスしていない」などという言い訳もあったが、このコメントは全面的に非を認めている。

しかし人々の反応を見てみると、このコメントに対して腹を立てている様子がある。何が気に入らないのか分からなかった。

「今後の対応について書かれてない」という話もあるが、そんなものは発生から数時間で決めることではない。そういう状況での取り決めがどうなっているかなどの詳細は、調べなければ回答できないこともある。

女人禁制を問題視している人もいるが、宗教上の取り決めなのだから、それが女性の人権を侵害するほどでないならばかまわないだろう。少なくとも、このコメントに女人禁制をどうするかということを含めなければならない理由はない。

誰に何を謝罪しているのか分からないという話もあったが、何を謝罪しているかは明らかなように思われる。「行事が動転して変なこと言っちゃったけど、ごめんね」というのが本文の趣旨だ。行事が言った変なこととは「女性は土俵から降りてください」であることは明白。

そして、「人命に関わる状況では不適切だった」というのだから、女性が救助作業をしてくれているのに土俵を降りてくれとアナウンスしたことを謝罪してると読み取るのは当然だろう。

誰に、かは確かに不明だ。こういったものは、一般的に大勢に向けるものだから、おそらくあのアナウンスはおかしいと感じた人々に向けたものだろうとは予想するが、実際のことはコメントをした人しか分からない。が、たいていこの手のコメントは不特定多数に向けるのが通例だから、このコメントだけを問題視することはできない。

「行事に責任を押しつけている」というのもあったが、事実ならば仕方ない。その部分を非難するためには、行事の判断で行ったアナウンスではないという確認が必要だ。勝手に「どうせ協会のお偉方がアナウンスさせたんだろう」と決めつけるわけにはいかない。

ヒステリーの原因はどこにあるのか?


人々の反応が、まず「理事長が気に入らない」というところから始まっているように見えるのは、おそらくは錯覚ではないだろう。

相撲界では不祥事が続き、最近では白鵬の暴行事件を端として、内部で争いを続けていた。そして相撲協会の体質のいびつさが明るみに出るにつれ、批判者が増えていった。

確かに伝統と称して暴力を当たり前と受け入れる大勢を敵視するのは分かる。それはきっと正しい態度だろう。私も、相撲協会なんてつぶしてしまった方がいいだろう、と思っている。

だが、それとこれとは別な問題だ。

嫌いなやつのコメントだから叩く、なんてことはしてはいけない。判断の基準は常に、好き嫌いではなく、正しいか間違っているかであるべきだからだ。

一応擁護派には釘を刺しておこう


こんな記事を書くと、協会の擁護派が図に乗るかも知れないので、釘は刺しておこうと思う。何でも「救急隊員がAEDを持って到着したから女性を下ろそうとした」という主張もあるようだ。

だが、動画を見れば分かるとおり、アナウンスがあったとき、救急隊員はまだ土俵に上がっていない。確かに会場には到着していたし、土俵に近づいてはいたが、すぐに救命処置を交代できる位置にはいなかった。

「救急隊員が来たので交代可能になったと判断したからアナウンスしたんだ」と主張するには、もっと待つ必要があった。女性の隣まで来て、さ、交代してくださいAED持ってきましたから、と言えるところまで来てからなら、そういう言い訳も不可能ではなかったかも知れない。

もっとも、その場合はアナウンス自体が不要だし、仮にするとしても「素早い救命処置をありがとうございました。救急隊員が到着いたしましたので、あとの処置は彼らにお任せください」が適切だと思うが。



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