2017年10月11日水曜日

World of Tanksの都市伝説。勝率調整について

だいたいチーム戦のゲームというのはどれもこれも似たようなものかも知れないが、WoTにも不思議な考え方をする人がたくさんいるようだ。

WorldofTanksの話。Noobのせいで成績が落ちる? とんでもないでは、「負けたら味方のせいだが、勝ったら自分のおかげ」という考え方を紹介した。

今回は、「自分の勝率は、運営会社に操作されている」というものを語ってみよう。

俺様がこんなに勝てないはずがない。勝率調整だ!


まず、「勝率調整」とはどんな概念かを説明しておこう。

これは、「運営会社が、プレイヤーの勝率が上がりすぎないように、ある一定値から離れないように調整している」というものだ。

運営会社なのか開発会社なのかは発言者にもよると思うが、そのあたりは厳密には定められていない。

「俺様は最近調子がよかった。先週は勝率が0.5%も上がった。なのに今週は負け続けて勝率が0.5%下がって、元に戻ってしまった。勝率調整に違いない!」という感じで使う。

運営会社がある一プレイヤーの勝率を見張っていて、その人の勝率がある付近に落ち着くように苦慮していると思っているらしい。

彼らの言い分としては、そう考えれば納得がいくし、そうでなければこんなことがしょっちゅう起きるはずがないとのことだ。

ちょっとプログラムを組んで確認してみた


しかし、勝率がある付近をうろちょろして、上がっては下がりを繰り返すと言うことはある。それは多分、みんな経験していることだろう。

そこで、この出来事が実際のところ、どのくらい珍しい出来事なのか。普通ならば起きないような出来事なのかどうか。それを確認してみた。

あるプレイヤーの勝率を53.99%に設定してみた。勝敗の内訳は、勝ち数2840、負け数2420だ。これで勝率が53.99%になる。これは、私のT20284242敗で勝率53.99%になったので、戦闘数を10倍にしたものだ。

実際、私のT20の勝率も、54%を超えては落ち、超えては落ちと、何度も54%越えを経験した。功も何度も54%の壁に阻まれると、普通の人だったら勝率調整を疑うのかも知れないと思った。

実験のサンプル数は10万人。同じ条件で、10万回実験を繰り返すと言うことだ。プログラムはこういう繰り返しの実験がすぐに終わるから楽だ。

各サンプルは1000戦を経験させる。1戦ごとの勝敗は、乱数で決める。各サンプルごとに実力としての勝率を設定しておき、乱数で勝ち負けを判定するやり方だ。

すると、次のような結果が得られた。

実力:勝率54%越え平均回数
50%5.49
51%7.19
52%9.31
53%11.3
54%12.26
55%11.62
56%9.81
57%7.7
58%6.04
59%4.86
60%4.077

実力としての勝率が50%のサンプルは、一戦ごとに50%の確率で勝ち数を1増やす。勝利する前の勝率が54%未満で、勝利したあとの勝率が54以上の時、勝率54%越えを経験したと見なす。

よって上の表では、実力としての勝率が50%のサンプルを10万人用意したところ、1000戦の間に勝率54%越えを経験した平均回数は5.49回だったということになる。

一番平均回数が多かったのは12.26回の実力54%のサンプル。そこを境界として、少しずつ平均回数が減っている。やはり、勝率54%越えをもっとも経験しやすいのは、実力が勝率54%くらいの人なのだろう。

だが、実力勝率が60%の人ですら、4回は経験している。WoTでの勝率60%というのは非常に高いもので、私などではとうてい及ばないレベルになる。50%というのはあまり高いとは言えず、最低限そのくらいはほしいよね、という扱いになっている。

私の総合勝率が54.65%程度なわけで、私より遙かにうまいレベルの人ですら、勝率54%越えを平均4回は経験するというわけだ。そして、たまたま53.99%になってしまった実力50%の人でも、同じくらいの54%越えを経験する。

よって、何度も同じくらいの勝率でうろちょろしているからといって、それは別に不思議でも何でもない。サイコロ振って適当に勝ち負けを決めても、起こりうることなのだから、運営会社による干渉を疑う必要などないことになる。

それでも勝率調整はありまああああす


しかし、そもそも勝率調整を信じる人というのは、こういったデータで全て納得してくれるわけではない。

私が示せるのは「サイコロ振ってもこうなるよ。勝率調整が存在しなくても、そういう出来事は普通に起こるよ」ということまでだ。勝率調整が存在しないことまでは証明できていない。

私は非存在証明を求めることが不当だとは考えていない。人によっては非存在証明を求められると「悪魔の証明だ」と言いはじめるが、私はそんなことはない。

それは悪魔の証明とはなにか(1)に書いたとおりだ。

しかしながら、今のところ勝率調整が存在すると考えた方が妥当な理由は見つかっていない。一方、それが存在しないと考える方が妥当だという考え方は存在している。

まどろっこしい考え方をするより、単純な考え方を優先しよう、という考え方はある。オッカムの剃刀というのだが、これについてはまたいずれ語ってみよう。

それでも勝率調整を信じる人については、仕方がないと思う。勝利は自分のおかげ、負けは味方のせいという考え方をする人に、何を語っても仕方ないだろう。それと同様、どうしても運営会社の陰謀のせいにしたいなら、させてあげてもいいと思う。

私は神を信じないが、神を信じることを悪いとは言わない。紙の非存在証明ができない以上、いる可能性は常にあるのだから。



2 件のコメント:

  1. このデータでは、勝率低下気味のプレイヤーが感じているような、ある時を境に「威力・貫通力の下振れが頻発する」「絞りきっても外すようになる」「頻繁にレーティングの低いプレイヤーとチームになる」等の現象を「確率上の偏り」としてしか説明できない。
    これらが一定期間好調であったプレイヤーの下降期に、立て続けに、複合的に、それも偶発的に発生する確率はかなり低いように思う。
    以上のことから、私は「勝率調整」とまでは行かなくとも、負けやすいグループと勝ちやすいグループに、交互に振り分けられる等の操作がオートで行われているのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
    まぁ、一年も前ですし見かけた方は意見を聞かせて下さい。

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    1. お返事が大変遅くなりましたことをお詫びいたします。
      つい今朝方、コメントが結構たまっていることに気づきました。

      2年半前に頂いたコメントになりますが、お答えしておこうと思います。

      「勝率ではなく、勝率に関わりそうないくつかの要素(貫通力・命中率・マッチメイキング)などが調整されているのだ」という主張だと思います。

      残念ながら、この主張に対しては、記事に書いたのと同様の手法では反証が挙げられません。そして、実際に何回経験しているのかを確認する現実的な方法が存在しないため(一万人が、今後1000戦のデータを計測し、提供してくれるなら別ですが)、モデルを作って仮説を立てても検証不可能です。

      そのため、もうちょっとざっくりとした考えを書くに留めます。

      勝率に関わりそうな要素が調整されて、人為的に勝率が上げ下げされているのだとすれば、ランダムの場合よりもより多く勝率のボーダー越えを経験するはずです。プレイヤー本人の実力が勝率54%であるとすれば、そのときに1000戦の間に経験する勝率54%越えは平均すると12.26回よりも大きくなるでしょう。

      1000戦のうちに12.26回経験するということは、大体81.56戦に1回経験するということです。一日に30戦プレイする人だと、三日に一回。一日に10戦しかプレイしない人でも、九日に一回は経験します。

      これだけでも相当な頻度で54%越えを経験することになります。もし本当に勝率に関わる要素が人為的に上げ下げされているとすれば、より頻繁に54%越えを経験するはず。

      なので、本記事で算出したより多くのボーダー越えを経験している、という報告が多くなれば、ランダムではない可能性が高まります。

      私の感覚としては、日に30戦する人が三日に一回経験するというのは、ごく自然な感じはします。昨日勝率上がったのに今日下がった! ということが頻繁に起きていることが予想されます。

      今のところ、人為的調整を疑うべき理由はなさそう、という立場は変わりませんが、まぁ、疑いたければ疑ってもいいだろうという立場にも変わりはありません。

      (なお、私はもう2年近くWoTをプレイしていないため、ここ最近のWoTの状態は知りません。最近になって勝率調整が実装された可能性については否定する材料は持たないので、私が、私がプレイしていた頃のWoTの話をしているという点はご了承ください)

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