2017年11月3日金曜日

統計に注意-成功例と失敗例の比較の仕方

世の中ではよく、「成功者はこういうことをしている」といった紹介がされる。さぁ皆さんも成功者のマインドから学びましょう、というわけだ。

しかしこれらの記事ではまともな比較はされない。ただ、成功者に見られる傾向を語るだけで、その傾向に見られる傾向まで扱うことはない。

統計データを扱い、そこから有益な情報を取り出す際には、このやり方では稚拙すぎる。もうちょっと内容を確認してみないといけない。

成功しやすい条件が、失敗しにくい条件とは限らない


成功者のスタイルを紹介する記事に対する最初の批判は、「それをすれば必ず成功するものではない」だろうけども、これは扱わない。そんなことは当たり前であって、誰でも確実に成功するという主張をする馬鹿はいないだろう。

そういった記事が述べるのは、あくまでも成功しやすいはずだ、とか、成功に近づけるはずということ。私がこの記事で注意したいのは、その考え方が成立していないというものだ。

さて、例えば商売で儲けた人なんかが取り上げられることがあるだろう。その人は大胆な考え方をもち、積極的にリスクを取ってでもチャンスをものにしようとしてきたかも知れない。そうやって成功した人がいるのだから、そのやり方が優れている、という論調になる。

が、その段階ではそんなことは保証されない。

ギャンブルを思い浮かべてみてくれ。大もうけする人の特徴とは、どんな特徴だろうか? 少額しかかけない人が大儲けすることがあるだろうか? 少額しかかけていない以上、それは普通ないことだ。

ギャンブルで大金をせしめる人とは、ギャンブルに大金をつぎ込む人でもある。

確かに少額では大勝ちできない。大勝ちするには大賭けした方が成功率が高い。しかし当然、わかりきったことではあるが、大賭けすれば大負けしやすくもなる。

つまり、大勝ちしやすいやり方が、同時に大負けしやすいやり方であることもあるということだ。

同じ条件を満たす様々な比較対象の必要性


ということは、成功しやすい条件というものがあったとしても、その条件が同時に失敗しやすい条件である可能性もあることになる。

人々に安心しておすすめできる方法というのは、その他の様々な方法と比較して、成功率が高く、失敗率が低いものだろう。そうでなく、成功率は高いが失敗率も高いだとか、失敗率は低いが成功率も低いだとかいうのであれば、それには注釈が必要になる。

よって、成功者のマインドを学ぶことが有益かどうかを確かめるために、それと同様のマインドを持つ、より多くの対象を調べてみる必要がある。

結局のところ、その手の記事というのは、成功者を選び出し、その人達の傾向を抜き出したものにすぎない。成功しなかった人の存在は忘れ去られている。

おそらくだが、一部の成功者のやり方は、多くの失敗者のやり方ともよく似ているだろう。万馬券に大金をつっこんで大勝ちする一部の人の裏には、多数の同じやり方で借金を増やす人々がいる。成功例から学ぼうとする際には、失敗例からも同時に学ばねばならない。

成功した原因を簡単に分かった気になってはならない


統計に注意-傾向と原因の問題。そうなる人とそうならない人の差の主題とも重なるが、ある出来事の原因というのはそう簡単に分かることではない。

なぜ成功したのか、という問いの答えを、分かった気にならない方がいい。いくつもの考え方に触れ、もしかしたらこれが原因ではないか、と予測することを否定するわけではない。それがなくては成長できない。

だが、その思いはあくまでも可能性の想起であり、決めつけや確信になってはならない。常にそうではない可能性も頭に入れて、注意深く検討するべきだろう。

これは実験や比較の際の一般的方法論だが、ある条件以外の諸条件を一定にして、ランダムな対象を調査するのが望ましい。

例えば、「こう考えれば成功する」というマインドを主張するとしたら、そのマインド以外の条件を一定にするということだ。もちろん、調査対象が人間の場合、そこまで条件を一致させることは難しい。だが少なくとも、そのマインドを持つ一部の人だけを選び出すようなやり方が不当であることは分かるだろう。

そのマインドがどのような影響を及ぼすのかを知るためには、そのマインドを持つあるグループ、今回の記事で言えば成功者だけを取り出して、そのマインドと成功者の関係性を論じるなどというのは、まさに馬鹿向けだ。

そのマインドを持つ、より多くの対象からランダムに選び出して調べてみなければならない。その結果それが成功率を高めているということが引き出されてくるのであれば、それは確かに成功の原因となるものという可能性が高まる。

私も分かっている。巷で求められているのは、私が馬鹿向けと呼んだまさにそういう情報なのであって、私のような人間はお呼び出ない。

が、もうちょっと人々は騙されにくくなるべきだと思うのだが。


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