2017年10月22日日曜日

将棋ソフトの発展と、人間の可能性について

今年の竜王戦第一局で羽生棋聖が先勝を収めた。永世竜王獲得は厳しいかなと思っていたけど、これで実現に一歩近づいた。

ここで落とすのではやはり今はもう及ばないという心配があった。

さて、昨今では将棋ソフトの実力は人間を遙かに超えてしまっている。しかし、これが人間にとって絶望的な話岳とも思えないので、そのあたりをちょっと語ってみよう。

人間が最高峰の将棋ソフトに勝てる可能性は1%未満だろう


将棋ソフトといってもたくさんある。ハム将棋も将棋ソフトの一種だし、ポナンザもそうだ。その実力には大きな違いがある。

第二期叡王である佐藤名人がポナンザに敗れたことで、人間とコンピューターの格付けは終わったと言えるだろう。あれが名人ではなく、羽生さんだったらどうかという話はあるが、二人のレーティングに大きな開きはない。結果が変わるとは思えない。

昨年の竜王戦では、三浦九段がカンニングを疑われて処分されたわけだが、カンニングしたソフトはスマホ版の技巧だと推測されていた。たかだかスマホ版の技巧にすらも人間は勝てないと白状したわけだ。

とてもではないが、そこからさらに何段階も改良が重ねられている最新の最強ソフトになど、人間が立ち向かえるわけもない。

が、だからといって私は人間の将棋に意味が無くなったと考えているわけではない。

世の中には、将棋ソフトを毛嫌いしている人がいることを知っている。その一部は未だに人間がコンピューターにはもう勝てないということを認めたくない人もいるようだ。また別な一部は、ソフト利用者の無礼さに腹を立てている様子でもある。

それは分からないでもない。確かに、ソフトが示す手を人間がなぞれないからといって、棋士を非難する姿は筋が通らない。ましてや中には、ソフトの手を、自分が考えたかのように語るものもいるのだから。

しかし、大多数の人はそこまでは行っていないだろう。コンピューターが人間を凌駕したことを認めてなお、人間が人間なりに頑張っていることを評価するはずだ。ソフトが人間思いつかない手を示しても、それが自分ではなくコンピューターが教えてくれたものだと明示した上で語る人の方が多いはずだ。

それでも成長がみられるトップ対戦


私も時々将棋の番組を、将棋ソフトに検討させながら観戦することがある。私が使っているのは、2016年版の技巧だ。あえて更新せずに古いままにしてある。

実際のところ、このバージョンですでに人間を超えているはずだからだ。多分、私のPCで動かしてるこれにすら、棋士は勝てないだろう。

ニコニコ生放送などで公式が使っているのは新しいバージョンのポナンザなどだが、それらと比べると私の技巧はかなり弱い。ほとんど勝てないだろう。それでも人間よりは強い。

が、面白いことがある。

古いソフトの方が、形勢判断に差が付きやすい。最新版のポナンザが100とか200だと判断してる状況でも、400とか800とか主張することがある。今のソフトはさらにたくさんの局面を評価できる分、意外となんとかなる状況だよと主張するのだろうか。

しかし、人間同士の形勢判断を聞いていると、新しいポナンザよりも古い技巧の方が近い気がする。ポナンザの何言ってるのかさっぱり分からない手順より、技巧の方が解説と近い考え方をしていたりするわけだ。

ここに人間の可能性を感じた。

今回の竜王戦第一局の終盤戦、羽生棋聖の差し手の多くは、うちの技巧の推奨手と一致していた。今回に限らず、トップ棋士の指し手の多くが技巧と重なる場面はいくつも見かけたように思う。

たしか、去年の竜王戦の丸山九段なんかも、ことごとく技巧と一致するような対局があったように思う。ところどころは違うのだが、特に問題の無い違いなので無事に勝ちきることができている。

私の感想としては、すでに部分的には人間は技巧と近いところにいるように思う。一度は人間を大きく引き離したと感じた技巧だが、棋士の方もソフトから学ぶことで、技巧に近いところまで来ているのではないかと思える。

人間の成長はゆっくりしたものであり、コンピューターに追いつけるわけはない。これからどこまでも引き離されては行くだろう。しかし、人間の方も今までの段階からは大きく成長できる可能性がある。

それで十分ではないだろうか。今まで至れなかった領域に、近づきつつあるのなら、それはとても立派なことだ。もしかすると、数年経てばトップ棋士は2016年版の技巧くらいは勝てるようになるのかも知れない。

それが可能なら2016年版のポナンザにも勝てるかも知れない。最後に人間を倒したソフトくらいまでなら、いつか倒せるのかも知れないというのは、なかなかロマンのあることだろう。


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