2017年8月8日火曜日

危険な自民党の憲法草案。緊急事態条項で選挙がなくなる(1)

自民党が憲法改正に対してかなりの執念を燃やしていることはよく知られている。現在用意されている憲法草案が、現在の憲法を大幅に変更しようとしていることも周知の事実だ。

たしかに様々な点で問題をはらんでいる草案だが、私が最重視している点は、なぜか未だに話題になっていない。9条に焦点を当てたい気持ちは分かる。現憲法の特徴的な部分だ。憲法でありながら国民を拘束しようとする不条理に苦情を言いたい気持ちも分かる。憲法をなんだと思っているのかと。

しかしながら、もっとも大きな危険性をはらんでいるのは、緊急事態条項であるということに、人々は気づいていない。これは、ナチスドイツの全権委任法の代わりともなり得る、独裁政権樹立のための条文となりかねない。

私はかねてよりこの条項に対して断固として反対してきたが、SNSの片隅で主張していたに過ぎないので、もう少し多くの人の目にとまるだろうこのブログでも書いてみることにする。

一応話題にはなった緊急事態条項


とはいえ、緊急事態条項が全く話題になったことがないわけではない。現在の憲法草案を自民党が発表したのは、確か2012年の夏頃だった。例のあの大震災の起きたしばらく後のことだ。私はそのときからすでに緊急事態条項にはきな臭いものを感じていた。

その年の暮れ、衆議院選挙が行われることになった。その際、私は自民党の憲法草案の、緊急事態条項の原文を確認した。その上で、こんなものは絶対に認めてはいけない。これは全権委任法をはらんでいると見抜き、いくつかの新聞社と政党に対してメールを送った。

返ってきたのは、共産党からのテンプレ回答だけだった。

なぜこんな危険なものに人々は気づかないのかと、あきれかえっていたが、数年経ってようやくメディアでも緊急事態条項が取り上げられるようになった。

やっと時代が私に追いついたかと喜んだのもつかの間、彼らはまたどうでもいい話ばかりをし始めた。いや、べつにどうでもよくはない。それはそれで重要な話であることは確かだ。だが、そこじゃない。それは致命傷ではないんだよ。

おそらくこのブログの読者も、緊急事態宣言下において、治安維持のための国家権力が強化され、国民の権利や自由が侵害される恐れがあるという、そういう報道は耳にしたことがあるだろう。かつての特高警察のような、横暴きわまりない危険な治安維持活動が正当化される恐れがある。

そういった指摘は無駄ではないし、確かに正当なものではある。だが、緊急事態条項に秘められた最大の危険性は違うところにある。

選挙が廃止される可能性


まだ憲法草案に目を通したことのない人は、こちらを確認してみるといい。


この第9章で緊急事態が定義されている。

なかなかに派手な条文だ。

99条 緊急事態宣言の効果
1、内閣は法律と同等の効力を持つ政令を出せる。また、総理大臣は地方自治体に命令を出せる。
2、政令を出した場合、国会の承認が必要となる。
3,国民は国家の指示に従わなければならない。
4,衆議院は解散されなくなり、衆参両院の議員の任期は特例を設けられる。

内閣、総理大臣に国家権力が集中することになる。先進国では三権分立という概念が広まっているが、そのうちの二権、立法と行政が一カ所に集まるわけだ。それを定義したのが1番。

2番の無意味さは後で説明する。

3番はすでにメディアで取り上げられたように、国民の権利や自由が侵害される恐れがあるとして危険性が指摘された。

が、だ。
真に絶対に受け入れてはならない条文は、4番であることを、どうして誰も見抜けないのか。私はそれが不思議でならない。

議員の任期に特例を設けられるということは、任期を延長することができるということだ。つまり、議員の任期切れが発生しなくなるということになる。

そして、衆議院は解散されない。参議院にはそもそも解散という制度はない。

さて? じゃぁ、次の選挙はいつ行われるんだ?

衆議院の選挙は衆議院が解散したときか、議員の任期が満了したときに行われる。参議院の選挙は、議員の任期が満了したときに行われる。

もう一度言うが、緊急事態宣言下では衆議院は解散されない。議員の任期も延長し続けられる。任期切れは起きないかもしれない。ということはだ。

もう二度と、選挙は実施されない。

そういうことも、十分にあり得ることになる。そして、選挙がなくなり、同じ顔ぶれの国会議員、内閣が好き放題に法律を作れるということは、9条なんて問題にならない。何をどうしようが止められない。

選挙がないんだから。

選挙があるときに好き放題やったら、次の選挙で落選する。しばらく立ち直れないほどの打撃を受ける。だが、選挙がないなら、誰がどうやって打撃を与えるんだ? 今までも9条は解釈でやりくりしてきた。おかしなことをすれば非難を受けたし、選挙での獲得議席にも影響した。

でも、もう影響しない。適当に屁理屈こね回して、日本語上、そういう解釈も成立するという解釈を提示しておけば、憲法上は問題なくなる。いくら国民が問題視しても、選挙がないんだから、何もできない。

よって、9条をどうするかなぞという問題よりも、緊急事態条項の方が致命的な問題であることは私には明らかなのだが、あまりこういう考え方は一般的ではないらしい。


次:危険な自民党の憲法草案。緊急事態条項で選挙がなくなる(2)


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