2017年8月31日木曜日

不正行為を行っている相手だからと言って勝手に暴力を振るってはいけない

世の中ではたびたび問題になるが、個人が勝手に人に暴力を振るって処罰することがある。やっている本人としては、正当な罰なのだろう。だが、そんな権限は与えられていない。

不正を犯す人間に対しては、警察を呼ぶなりなんなり、正規の手続きを踏んで対処しないといけない。どうしても我慢できずに手を出すなら、それが違法であることは自覚が必要だ。

不正行為に対して個人が勝手に体罰を加えていいなら、どうなるか


相手が悪いことをしたから殴ったんだという場合もある。ニコニコ動画のニュースで見かけた記事、世界的トランペッター・日野皓正が中学生を往復ビンタでも、どう見ても悪いことをしたのは殴られた中学生だ。

私としても、この中学生に非がないなどとは全く思わない。が、非があったからと言って殴ってはいけない。

もし不正行為に対して勝手に体罰を加えていいのだとしたら、道路交通法を守っていない自転車の運転者を殴ってもいいことになるし、法定速度を守ってない運転手を引きずり出してぶん殴ってもいいことになる。彼らは違法行為を働いているのだから。

だが、まさかそんなことを認めようとは思うまい。

そういうのを見かけたら口頭で注意するか、警察に通報して捕まえてもらわねばならない。個人が勝手に殴るなどは許されることではない。

誰かを殴っていい場面があるとすれば、それはスポーツや格闘技の試合などで、お互いにあらかじめ了解の上で殴り合う場合とか、正当防衛が成立するような場合だ。または雪山で遭難した時の、「寝るな! 寝たら死ぬぞ!」のごとく、相手を救う必要がある場合に殴るなどは認められるべきだろう。

事後の体罰は問題の解決にならない


たいていの体罰とか暴力というものは、問題を回避したり解決したりするために行われるのではない。腹が立ったから、気晴らしに殴るだけだ。

上記のニュースの場合でも、今更中学生を殴ったところで問題は解決しない。彼が妨害行動をやめないというなら、強制的に連行し、場から遠ざけなければならない。ここでの問題は、妨害行動だ。その妨害行動を制止するためには、場から取り除けば事足りる。

だが、人は普通そうは考えない。とりあえず、頭にきたからぶん殴らないと気がすまなくなる。人を殴るのは、気晴らしでしかない。問題解決のために殴るわけではない。

問題を解決してはいけないわけではない。教室で騒いだり暴れたり、授業を妨害する学生がいたら、それを場から取り除き、ほかの学生達の学習の邪魔にならないように手を打つことは正当だろう。言って聞かないなら強制的に連れ出してもいいし、どうしても妨害行為をやめないなら、警察を呼んでもいい。

一部のできの悪い子のせいで、ほかのまじめな子が迷惑をしているというのに、それを強制的に排除することすら非難する人たちもいるようだが、私にはその気持ちは分からない。さしあたって、今現在の妨害行為は排除しなければならないはずだ。

腹が立ったら人を殴っていい、という道理はない。世の中では、人を怒らせた方が悪いという主張もあるようだが、なら、勝手に怒って勝手に殴ってもいいことになる。んな馬鹿な。腹が立ったからといって、人を殴ってはいけないというのが、まともな発想だろう。

もちろん中にはもっと頭の悪い、相手が子供の場合はクソガキだから殴っていい、という人もいる。子供に教育が必要なら、教育のなっていない大人は悪い手本にしかならないから、もっと殴ってもいいことになる。変なのが変な見本を見せるから、子供がまねをする。

何より恐ろしいのは、子供達の学習能力を甘く見ていることだ。子供だから殴る、子供だから注意する、というのは、弱い相手だから殴る、弱い相手だから注意する、というのと変わらない。子供には手を出せても、同じ事をする大人に手を出せないならば、それを見た子供は正確に理解する。

「こいつら偉そうなこといってるけど、弱いものいじめしかできないんだな」と。

世の中では不思議な事件が起きる。何が気に入らないのか分からないが、「だれでもよかった」といって人を襲ったりする。そういうとき、襲う相手は決まって弱者だ。自分より強そうな相手を襲う奴はいない。ずっと、弱いものいじめしかできない人間を見続けているからだろう。

現場の人間にそこまで求める方がおかしい


しかしながら、学校での体罰などは、子供のしつけのために必要だという人は多い。それができなくてはクラスをまとめられないのだと。

私の考え方はむしろ逆だ。ただでさえ教員不足で手が回らないといわれている。学校にしつけなど求めない方がいい。学校は、勉強だけ教えてくれればいい。教師には、それ以外の手間のかかる仕事を与えず、責任をとらせず、その代わり権限も与えない。

おかしな子供が学校の業務を妨害し始めたら、警察を呼んででも場から除外すればいい。更生のための指導や説得は後回しだ。教師も仕事があるんだから。後は保護者の方でやってくれ。

世の中で問題になる教師の体罰というものは、ほとんどが承認欲求が満たされないことによるものだ。自分の言いつけを守ってくれないことに腹を立てているだけ。子供が自分の言うとおりにならない、子供が自分を認めてくれない、そのことに腹を立てて手を出しているのがほとんどだ。

そういった問題を解決するためには、教師に権限も責任も与えないことだ。しかし今は、途上にある。名目上は、権限は与えないが責任はとらせる形になっている。これでは混乱が生じるのは当たり前だ。

責任を果たすための権限は必要なのだから。

ちゃんと筋を通して責任も求めないようにしなければ、勝手に暴力を振るってしつけと称する人間達はいなくならないだろう。


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