感覚的にはすんなり受け入れられない、モンティホール問題。私も最初見たときは、直感に惑わされて、間違った答えを出してしまった。正しい答えを教えられても、すぐには納得がいかなかったのを覚えている。
それは仕方がない。数学者ですらすぐには納得がいかなかったのだから。博士、とかだよ? 数学博士ですら状況を把握するのに時間がかかったのだから、私が戸惑うのも仕方がないだろう。
私が、自分で納得のできる解釈に行き着いたのは、野宿での旅の途中だった。静岡だったかな。あのあたりをぷらぷらしているときに、ふと「あぁ、こういうことか」と腑に落ちたのだった。
今回は、このあたりの話をしてみよう。
モンティホール問題
あ、ちなみにこの記事のタイトルの中ニ流の「ニ」は「ニ(カタカナ)」であって「二(漢数字)」ではないので注意してほしい。「中卒ニート流」の略であることは言うまでもない。どうでもいいけど。
モンティホール問題を知らない人のために、まずオリジナルを紹介しておく。ただしオリジナルは車とヤギを使うのだが、わかりやすくアタリとハズレを使うことにする。
1、ドアが三つ存在し、その奥には一つのアタリと、二つのハズレがランダムに配置されている。
2、プレイヤーはドアを一つ選ぶ。
3、司会は選ばれなかったドアの中から、ハズレが入っているドアを開けてみせる。
4、プレイヤーは、ドアを選び直すことができる。
この問題が騒動となったのは、4でプレイヤーがドアを選び直すことを選択すると、アタリを引く確率が2倍になるという主張がなされたからだ。多くの数学者はそんな馬鹿なと反論した。ところが、最終的には主張が正しいことが明らかになった。
すこし、そのあたりの経過を見てみよう。
どうして選び直すと確率が変わるのか
多くの人の直感では、選び直しても直さなくてもアタリの確率は変わらないと感じられるようだ。私も最初はそう感じた。
なぜならば、残されたドアは二つ。そのどちらかがアタリであり、もう一方はハズレであることは、ルール上明らかだ。まさに1/2の確率の状態。コインでも投げて選び直すか直さないかを決めるとすれば、間違いなく1/2の確率でアタリを引けることになる。
数学者も同じようなことを考えたようで、「選び直したからと言ってアタリの確率が2/3にはならない。1/2のままだ」という反論が、1000通ほど送られたらしい。この1000通は、数学の博士号取得者からのものだ。全体では10000通くらいあったとwikipediaには記されている。
論争は紛糾し、数式で解くのを放棄して、コンピューターシミュレーションを行う者まで出てきた。私もやったことがある。去年将棋のプロである羽生善治が生涯初の6連敗を喫したと言うことで、あの人の勝率と対局数から、6連敗が出現する確率はどのくらいかを求めた。
叡王戦の決勝トーナメントのマッチメイクでは、当時の叡王山崎八段の「僕が一番羽生さんとあたりにくかったはずなんですけど」という発言が正しいのかを検証するため、コンピューターシミュレーションを行ったりもした。
確率の計算方法が分からないから、とりあえずシミュレーションしてだいたいの確率を求めてみようというのは、確かに便利な方法だ。
で、このモンティホール問題をシミュレーションした結果、確かに選び直すとアタリ率が2/3になったようだ。その結果を受けて自らの間違いを受け入れた数学者が多いというのだから、実測というのはやはり強いのだろう。
ただ、そのシミュレーションが数百回しか行われていないことにはちょっと引っかかりを覚える。私がそういうシミュレーションをするときは、少なくとも10万回は試行する。といっても、当時のコンピューターと今のコンピューターでは計算速度が違いすぎるので、そんなにやってられなかったのだろうとは思う。
結局のところ無数の数学者を全員まとめて敵に回し、たった一人で自説を主張し続けた女性、マリリン・ボス・サヴァントが正しかったということで決着がついた。
ゲームのルールの再確認
実はすでに紹介したゲームのルールに、とても大事な部分がある。だからそこをもう一度、強調して説明しておこう。
3、司会は選ばれなかったドアの中から、ハズレが入っているドアを開けてみせる。
このルールの存在を忘れてはいけない。このルールがあるかないかで、この問題は全く違ったものになってしまう。
ルール上、司会はハズレのドアしか開けない。どこにアタリがあるのかを事前に知っており、プレイヤーが選ばなかったドアの中から、ハズレのドアだけを開けて見せてくれる。うっかりアタリのドアを開けてしまうなんてことは、ないことになっている。
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